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久々の投稿になってしまいましたが、今回は名古屋の東山動植物園で暮らす、
アジアゾウのワルダー(♀, 推定53歳)を紹介いたします。
先々月の1月19日が来園記念日で、名古屋に来て51年を迎えました。半世紀以上過ごしてきており、お子様からご年配の方までさまざまな世代の方に親しまれている個体です。
彼女は東山で過ごしてきたアジアゾウの中で、最年長飼育記録を更新中です!
今回は、彼女のことを紹介いたします。
1.生い立ちと性格
彼女は1971年にインドで生まれたとされ、1973年1月19日に来園しました。(1)
名前の「ワルダー」は、インドのマハーラーシュトラ州にある都市「ワルダ(Wardha)」に由来するのだそうです。(2)
最初は、既に暮らしていたメスのエーコ (栄子とも) と共に約20年近く過ごしてきましたが、1993年にエーコが亡くなった後は、ひとりの暮らしが続きました。(3)
(厳密に言えば、1997年にボルネオゾウのアイが来園したものの、アイとワルダーがふれあうことはなかったようです。(4))
ひとりの暮らしが長かったことと、東山に限らず当時は飼育員さんがゾウたちと同じ空間に入って飼育管理をする「直接飼育」が多かったためか、どちらかといえばヒトへの依存度が高い面があります。
2005年には映画「星になった少年」の宣伝イベントとして、一時的に千葉県の市原ぞうの国からランディ(♀,推定1980年生)が来園したことがありました。(5)
市原ぞうの国で暮らすランディ(2023年5月28日撮影)。
ランディは温厚な性格で、さまざまなゾウとも上手くやることが出来る個体です。
ワルダーにとっては久々の同種の個体が来たこともあり最初は警戒していたようですが、最終的には挨拶が出来るようになったそうです。
性格は慎重で、初めての出来事に慣れるのには時間がかかることもあります。ただし、面倒見が良く、飼育員さんや他のゾウたちと接するのが好きなようです。
柵越しにあいさつするアヌラ(左)とワルダー。他のゾウたちとは一緒に出ていませんが、柵越しに遊んだり、仲良くする場面も多々見られます。
彼女が日本に来た時代は、ゾウたちのパフォーマンスなどもおこなわれていたことが多かった時代でした。一昔前はハーモニカやタンバリンの演奏や、フラフープを回すこともありました。
また、飼育員さんとのふれあいの場面も多く見られます!
ヒトとの関わりが多かった彼女にとって、信頼する飼育員さんは心を許せる存在かもしれませんね。
2.新施設への引っ越しと奮闘
2013年1月29日には2007年にスリランカから来たアヌラの初めての出産があり、その時生まれたこどもは「さくら」と名付けられました。
ワルダーは出産経験がありませんが、隣室に居るアヌラを宥めたりするなど彼女の初産を精神的にサポートしていたのだそうです。
そうして2013年9月にオープンを控えた現在のアジアゾウ舎「ゾージアム」への移動がせまっていました。
3.最近のワルダー
最近(2023~2024年)のワルダーの姿を、写真を通してご紹介します。
好物のカシの枝葉を食べるワルダー。他の個体とは一緒に過ごしていないためか、食事も自分のペースで食べられます。食べる姿はどこか年の功を感じる場面も。
先述したとおり、今ではプールで豪快に遊ぶ姿も。気温が高い日に見られることが多いですが、そうでない日にも入ることも。
運動場にある水桶に鼻を突っ込むワルダー。水を飲む時だけでなく、ここに乾草や青草などの餌を浸してから食べることも。その方が食べやすいのかもしれませんね。
写真の右側に、青草を入れたかごがあります。運動場でもそのエリアにはまだ慣れない様子があります。そこへ向かう動機付けのために、餌の一部を置き彼女自ら来てもらう方法をとっています。(2023年3月撮影)
こちらは今年1月頭に撮影したもの。飼育員さんの努力が功を奏し、ワルダーはこのエリアでも過ごす時間が少しずつ長くなりつつあります。現在は写真に写っている反対側にも足を踏み入れるようになったのだとか。(2024年1月撮影)
扉の格子の奥にあるフィーダー(餌が隠されているおもちゃ)から餌を取り出そうと、鼻息で吸い出すようす。(2023年2月撮影)
元々このやり方は、2020年まで飼育されていたサバンナゾウ (Loxodonta africana) に対しておこなわれていたもの。ワルダーも器用に鼻息を使い、フィーダーの中のペレットを取り出して食べています。
様子を見に来た飼育員さんに鼻を伸ばして甘えるような姿を見せるワルダー。(2023年7月撮影)
信頼する飼育員さんが来ると、まるでこどものように甘える姿も見られます。
隣のスペースにいるコサラと柵越しに交流する姿。(2023年9月撮影)
コサラと接する時はなぜかお尻を向けて接することがほとんど。
飼育員さんから貸してもらった竹ぼうきで、体のお手入れをしようとしています。(2023年6月撮影)
鼻先で丁寧につかみ、鼻だけでは届きにくい背中や腹部を孫の手のようにして掻くことが見られます。使い終わった後は飼育員さんに直接返す姿も!
今回は、東山で半世紀以上を過ごしてきたアジアゾウのワルダーについて紹介しました。
読者のみなさまの中には、彼女を実際に見たことのある方は多いかも知れません。
馴染みの方も、まだ見たことない方も、さまざまな表情を見せてくれる彼女に是非会いに行ってみてはいかかでしょうか。
もし実際に足を運んでくださったならとても嬉しい限りです!
引用文献
(1) 東山動物園くらぶ(2017)ZOOっといっしょ2 東山動植物園公認ガイドブック 中日新聞社
(2)坂本小百合(2006)あなたのとなりに暮らしてるアジアゾウ 全66頭大調査 飛鳥新社
(3)東山公園協会(2008)飼育ノート ようこそ!「アヌラ」「コサラ」~10年ぶりのアジアゾウ導入~ ひがしやまNo.4, 東山公園協会
(4) 東山公園協会(1997) 飼育レポート アジアゾウの飼育 -子ゾウとのふれあい- 東山動物園友の会 No.45,東山公園協会
(5) 東山公園協会(2005)飼育レポート 市原ぞうの国「ランディ」の来園!その時「ワルダー」は… 東山動物園友の会 No.78, 東山公園協会
(6) 東山公園協会(2014)飼育ノート 新アジアゾウ舎への引っ越し ひがしやまNo.28, 東山公園協会
(7) 東山動植物園公式ブログ ワルダーさんが…っ!! https://www.higashiyama.city.nagoya.jp/blog/2022/08/post-4751.html 2024年3月14日訪問
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