前回の投稿で、世界ゾウの日に合わせ、ゾウの特集をすると公表いたしました。
第1回となる今回は、アジアゾウ (Elephas maximus) について。
アジアゾウは日本の動物園でも多数飼育され、私たちにとっては最も馴染みのあるゾウだと思います。そんな彼らの特徴をご紹介いたします!
写真は豊橋総合動植物公園のチャメリー (左、♀) とダーナ (右、♂) 。
目次:
その1:分類・分布
その2: 体の特徴
その3: 生活・一生
その4: アジアゾウが見られる日本の動物園
その1 分類・分布
アジアゾウは、長鼻目、ゾウ科、アジアゾウ属 (Elephas属)に分類されます。
現生のゾウの仲間は、全てゾウ科に属しており、アジアゾウ属に属するのは本種のみです!
(残り2種は、アフリカゾウ属 (Loxodonta属) に属しています。)
学名 (世界共通の呼び名) は、「Elephas maximus」。Elephasはギリシャ語でゾウ、maximusは最大という意味で、「最大のゾウ」という意味になるそうです。
(現生の最大のゾウはサバンナゾウですが、学名が先に決まったのがアジアゾウだったというエピソードがあるようです。)
彼らはインドやスリランカ、ミャンマー、タイ、ラオス、マレーシア、インドネシアなど、
熱帯アジアに広く分布しています。
分布域の詳細については、IUCN (国際自然保護連合) のレッドリストにて、詳しく紹介されています。気になる方はそちらをクリックしてご覧ください!
主な生息地は、熱帯雨林や草原、まばらな林。(1)
アジアゾウは、現在、外見や遺伝子の違いや生息地の違いなどから、
現在、主に4つの亜種に分けられるそうです。(2)
1.インドゾウ (Elephas maximus indicus) インドやタイなど大陸部に生息
2. スリランカゾウ (Elephas maximus maximus) スリランカに生息
3. スマトラゾウ (Elephas maximus stamaranus) スマトラ島に生息
4.ボルネオゾウ (Elephas maximus borneensis) ボルネオ島に生息
(ボルネオゾウをスマトラゾウの中に含め、3亜種とする説もあるようです。)
こちらが亜種のインドゾウ。後述しますが、日本の動物園では最もよく見られる亜種。
体が一番大きくなるそうです。
写真は、豊橋総合動植物公園のダーナ (♂) 。
スリランカゾウは、体格はインドゾウより少し小さめですが、
他の亜種に比べると、体色が黒っぽい個体が多く、
オスは牙が目立たない個体が全個体数の9割以上を占めるそうです。(3)
写真は東山動植物園のアヌラ (♀) 。
スマトラゾウとボルネオゾウは、
他の2亜種よりも一回り体が小さいことが特徴だそうです。
写真は福山市立動物園のボルネオゾウのふく (♀) 。
お次は、アジアゾウの体の特徴をご紹介いたします。
引用文献
(1) Don E. Wilson, Russel A. Mittermeier (2011) Handbook of the mammals of the world vol2. Hoofed Mammals : Lynx Edicions
(2) 田谷一善 (2017) ゾウの知恵 陸上最大の動物の魅力にせまる SPP出版
(3) Shermin de Silva, Ashoka D.G. Ranjeewa, Devaka Weerakoon (2017) Demography of Asian elephants (Elephas maximus) at Uda Walawe National Park, Sri Lanka based on identified individuals, Biological conservation 144: 1742-52, ELSEVIER
その2 体の特徴
お次は、アジアゾウの体の特徴をご紹介いたします。
まずは、上の写真の「体長」と「体高」について。
体長は、頭の先端からお尻までの長さ、体高は、肩の先端から肢の先端までの長さ。
体高… 230~300cm (最大記録で♂で340cmという記録あり)
体長… 550~640cm
体長と体高共に、個体や亜種によって異なりますが、オスの方がメスよりも大きいことが多いそうです。
体重は、オスで3600~6000kg、メスで2700~4160kgほど。
最大級の個体としては、オランダのEmmen Zoo (現在はWildland Adventures Zoo) にて飼育されていたRadza (♂) で、7200kgという記録があります。(1)
また、アジアゾウは、耳や鼻など、
体の一部分が肌色や白色になっていることも特徴です。
写真は、京都市動物園の美都 (♀) 。
主に年齢を重ねてくると、こういった部分が増えてくるそうです。(2)
この部分は個体によって異なるので、個体識別にも役立ちます!
アジアゾウの牙は、オスは目立つ個体が多いですが、メスは短い個体が多いことが特徴です。ただ、亜種のスリランカゾウのオスの9割以上が牙が短く、目立たない個体だそうです。
左がオスの牙、右がメスの牙。
足には、蹄があり、その数は前足に5つずつ、後足に4つずつあります。
足は一見すると太い丸太のようですが、実はつま先立ちをしています!
脂肪で構成されたパットがクッションとなっているようです。
こちらは足の裏。
足裏にある溝で地面をしっかり踏みしめたり、滑り止めに役立つのだそうです。
そして、アジアゾウの鼻先は、こんなふうになっています。
上の鼻先に一つだけ突起があります。
アジアゾウはモノをつまんだりする際には、
この突起で巻き付けるようにしてつまみます!そして、彼らの生活と一生をご紹介いたします。
引用文献
特に注のない場合、以下の文献を使用しています。
Don E. Wilson, Russel A. Mittermeier (2011) Handbook of the mammals of the world vol2. Hoofed Mammals : Lynx Edicions
田谷一善 (2017) ゾウの知恵 陸上最大の動物の魅力にせまる SPP出版
(1) Elephant Encyclopedia https://www.elephant.se/database2.php?elephant_id=312 2022年8月7日訪問
(2) Asian Elephant: Smithsonian's national Zoo https://nationalzoo.si.edu/animals/asian-elephant 2022年8月7日訪問
その3 生活・一生
アジアゾウは、最年長のメスをリーダーとし、
メスとそのこどもを中心とした群れで生活しています (母系社会) 。
妊娠期間は20~22か月。生まれたばかりの赤ちゃんは80~120kgほど。
大体3~4歳ごろには完全に離乳するといわれています。
こどもはオスもメス共に群れの中で育ち、さまざまなことを学ぶといわれています。
じゃれ合う秋都トンカム (♂, 左) と、夏美ブンニュン (♀, 右) 。遊びを通して仲間たちとの関わり方などを学ぶのだそうです。
そして、野生では12~15歳頃に性成熟を迎えるようになるそうです。
(飼育下では性成熟が早くなる傾向があります。)
メスは基本的に群れに残りますが、オスは生まれた群れを離れ、
オス同士の小さな群れか、単独で生活するといわれています。
成熟したオスは、発情を迎えたメスを見つけると、メスたちの群れに合流し、繁殖行動をおこなうといわれています。
寿命は約60~70年といわれています。
写真は、東京都の多摩動物公園で飼育中のアヌーラ (♂) 。彼は今年で推定69歳となり、国内で飼育されているアジアゾウの中では最年長です。
世界記録は、台湾の台北市立動物園で飼育されていた林旺 (リンワン, ♂) で、86歳という長寿記録をつくったそうです。(1)
最後に、アジアゾウが見られる日本の動物園をご紹介いたします。
引用文献
特に注のない場合、以下の文献を引用しています。
Don E. Wilson, Russel A. Mittermeier (2011) Handbook of the mammals of the world vol2. Hoofed Mammals : Lynx Edicions
(1) 田谷一善 (2017) ゾウの知恵 陸上最大の動物の魅力にせまる SPP出版
その4 アジアゾウが見られる日本の動物園
2022年8月8日現在、32施設で約80個体のアジアゾウが飼育されています。
詳しい飼育園については、日本動物園水族館協会 (JAZA) のHP内の
「飼育動物検索」で
学名のElephas maximusを入力すると確実に調べることができます。
また、全ての亜種を見ることができるのも大きな特徴です!
大半は亜種のインドゾウが多いですが、それ以外の亜種を見てみましょう。
ボルネオゾウは、広島県福山市にある、福山市立動物園だけで飼育されています。
名前はふく (♀) 。お客さんからは「ふくちゃん」と呼ばれ親しまれています。
スマトラゾウは群馬県富岡市にある、群馬サファリパークだけで飼育されています。
オスのアスワタマと、メスのイダの2個体が生活しているそうです。
スリランカゾウを飼育している施設はもう少し多く、
東山動植物園や多摩動物公園、山口県の周南市徳山動物園など、
6施設で13個体が飼育されています。
こちらは当ブログでも頻繁に登場している東山動植物園のさくら、コサラ、アヌラ (左から順に) 。
ちなみにさくらは、スリランカゾウとしては日本で初めて生まれた個体なのだそうです。
最近では、ゾウたちの野生での生活を考慮し、
群れでの飼育をする施設が増えてきました。
こちらは京都市動物園。現在は5個体が暮らし、そのうちメス4個体が群れで生活しています。
さまざまなコミュニケーションをする様子が見られます!
私は未訪問ですが、札幌にある円山動物園、千葉県市原市にある、市原ぞうの国でも群れでの飼育がおこなわれ、繁殖にも積極的に取り組んでいます。
今回は、世界ゾウの日記念で、アジアゾウについてご紹介いたしました。
これを機会にゾウたちのことに興味を持ってくださると幸いです。
かみやん
クイズ
以下の選択肢の内、
アジアゾウ、サバンナゾウの違いについて正しい選択肢はどれでしょうか?
1 アジアゾウの方が大きい
2 背中の形が異なる
3 アジアゾウには牙が無いが、サバンナゾウには牙がある
4 サバンナゾウの鼻先の突起は一つだけである
ヒント:今回のブログ内と、以下の写真をご活用ください!
また、おまけですが、この写真に写っている個体もわかった方も、コメントしてくださると嬉しいです。
答えは次回のブログで発表いたします。
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