のんほいゾウオロジー2023秋、参加してきました!

 久々の更新になってしまいましたが、私のペースで少しずつ再開していきたく思っております。

11月25日(土)に豊橋総合動植物公園(のんほいパーク、以下豊橋と表記)にて開催されたのんほいゾウオロジー2023秋に参加してきました!

今回は国内最大級のゾウ舎をぐるっと回ってゾウのクイズに答えたり、普段見られないバックヤードの見学が可能なイベントでした!

当記事では、今回見ることができたバックヤードを紹介していきます。

左からバヴァーニ(♀)、ドローナ(♂)、チャンパカ(♀)。

目次

1. いざ、バックヤードへ潜入!

2. ゾウたちが夜過ごす寝室の中は?

3. ゾウたちのトレーニングエリアに接近!


1.いざ、バックヤードへ潜入!

受付を済ませると、まずはこのトンネルをくぐりました。

本来は飼育員さんなど園の関係者しか入ることの出来ないエリアです。ゾウの飼育では餌や運動場への土砂の搬入などもあるため、このトンネルは軽トラックなども通ることが可能な大きさになっています。

トンネルをくぐって、左手にはこのような壁がみえてきました。


運動場の外壁をバックヤードから見ると、このようになっています!

こちら側にはタケやバショウ(奥のバナナのような植物)が植えられ、外壁には飼育員さんの観察用&餌やり用の足場があります。

タケやバショウは葉が伸びてくると、ゾウたちが鼻を伸ばして食べることもあるそうです。

こちらのエリアを運動場側から見ると下の写真のようになっています。

普段私たちが見ている壁面には、穴がありそこに餌を隠してゾウたちに探してもらうほか、壁の上から飼育員さんが餌を与えることもあります。

運動場の壁面の右手に、ゾウたちの寝室があります!


2.ゾウたちが夜過ごす寝室の中は?

豊橋ではゾウ舎は4棟あり、運動場側の裏から見るとこのようになっています。

建てられた年代などは異なりますが、それぞれの棟に1部屋ずつあり、彼らが夜間過ごすのに十分な広さになっているのだそうです。

こちらは②の寝室。年季は入っていますが、とても大きな部屋です。

主にオスのドローナ、メスのチャンパカとバヴァーニの3個体が普段使用しています!


今回はそのうち「①」の寝室内部に特別に入ることが出来ました。

寝室の内部はこんな感じ。柵が斜めになっていて、ゾウの鼻が通りにくいような構造になっており、どの部屋も飼育員さんが柵越しに健康管理のためのトレーニングをおこなえるような構造になっています。


この部屋では、主にオスのダーナ(推定1971年生) が過ごすことが多いそうですが、

元々巨大な彼のために設計された部屋のため、彼だけでなく、若メスのチャンパカとバヴァーニの2個体で使う場合もあるのだそうです。

部屋の高さは5m以上もあり、上を見上げるとこのような設備が。


筒は暖房の送風ダクト、左右にあるのはチェーンブロックというクレーンのような器具。

冷暖房が完備され、夏でも冬でも快適に過ごせるようになっています。特に寒いときはゾウたちが寝室に戻ってくるより前に暖房を付け、部屋全体が温まるようにするのだそうです。

チェーンブロックは、万が一ゾウが起き上がれなくなったときに役立ちます。

器具でゾウを上から吊り上げることで、起立を補助します。別の施設ですが、これがあったことで助かった個体もいると聞きます。

万が一の有事の際に、使用できるようゾウ舎の天井に設置されています。


こちらはゾウ舎内の職員用の通路。

職員さんたちは赤線が書かれた外側を歩きます。

線引きしてある理由としては、赤線より内側はゾウの鼻が届く範囲のため、接触事故を減らすため。他の動物園でもこのような線が引かれ、安全対策のひとつとなっているそうです。


ほかには飼育作業にて使うアイテムの展示も。

左から糞などを運ぶ手押し車(猫車)、トレーニング時のご褒美を入れておく肩掛けバケツ、水切り、竹ぼうき、デッキブラシ。

これらの用具がゾウたちの飼育のさまざまな場面で役立っています!


こちらは、部屋の柵の一部。柵上部の細い鉄棒部分が軽く曲がっているのが見て取れます。

ダーナは年に数回マスト (ムスト) と呼ばれる生理現象がやってきます。その際は普段よりも気性が荒くなり、柵へと体当たり頭突きをすることもあるそうで、その時に曲がってしまうこともあるそうです。

今回訪問した際は、マスト期真っ只中でした。目の横にある「側頭腺」から黒い液体が分泌されるのもこの時期に起こるのだそう。

3.ゾウたちのトレーニングエリアに接近!

外には、ゾウたちの健康管理のためのトレーニングをするための特別なエリアが設けられています。


所々に耳や足の部分が出せるようになった扉付きの特別な柵があります。
これは「PCウォールと呼ばれているのだそうです。

この柵があることで、飼育員さんの安全を確保し、同じ空間に入らずともゾウたちの健康管理のためのトレーニングがおこなえるようになっています。

ここにゾウたちを呼び出し、足や耳を扉から出してもらったり、足のお手入れや採血の練習をします。更に削蹄や足裏のお手入れや、耳からの採血などの治療もおこないます。

このトレーニングは、ゾウたちが何かの行動をした直後にご褒美をあげると、その時にしていた行動を頻繁におこなうようになる「オペラント条件付け」を応用したもの。(1)

以下の写真は豊橋のではありませんが、東京の多摩動物公園のサバンナゾウ (Loxodonta africana) にて、PCウォールを使っておこなわれているトレーニングの一例です。


飼育員さんの掛け声に応え、牙を柵越しに見せています。
この体勢でじっとしてもらい、折れた牙の患部を治療しています。この時飼育員さんは、この体勢をしてもらった時にホイッスルを鳴らし、ご褒美の餌をあげています。

こうした動作が出来るようになるには、個体によっても差があるそうです。

2021年にインドから来たオスのドローナは、この方法でのトレーニングは初めてだったそうですが、すんなりと理解していったのだと飼育員さんがおっしゃっていました。



豊橋でもPCウォールでのトレーニングで、足や蹄の手入れ、採血などを安全におこなえるようになり、彼らの日々の健康管理にも役立てられています。

PCウォールの耳や足を出す部分は、位置や高さが異なる扉があります。

扉を開ける部分を調整することで、小さな個体から巨大な個体までトレーニングが可能なように設計されています。

因みに、足を出す部分の扉を全開にすると、お尻を出すことも出来るそうで、その時に応じてさまざまな使い方ができるとおっしゃっていました。

このトレーニングエリアは、豊橋で暮らすゾウたちの健康維持にとっても要ともいえる場所かもしれません!


今回はのんほいゾウオロジー2023秋で見学できたバックヤードの紹介をいたしました。

表からではわからないさまざまな飼育の工夫が垣間見ることができるバックヤード。今後もこのようなイベントが開催されるのであれば是非参加したいところです。

今回は飼育員さんからもさまざまなことを教えてくださりました。改めてこの場で感謝の意を申し上げます。

魅力的な豊橋のゾウ舎、これからもますます目が離せません。


引用文献

(1) (公社)日本動物園水族館協会飼育ハンドブック編集委員会 編 (2011) 新・飼育ハンドブック 動物園編 第5集 危機管理・感染症対策・トレーニング・環境エンリッチメント (公社)日本動物園水族館協会

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