動物慰霊祭の季節 ここ1年で亡くなった動物たちを偲んで

 かみやんです。

9月もそろそろ終わりが近づき、夜は肌寒くなってきたこの頃です。

毎年、9月の秋分の日辺りに、日本各地の動物園で、「動物慰霊祭」が開催されています。

動物園では、来園者に動物たちの素晴らしさを知ってもらうため、そして希少野生生物の保全のため、様々な生き物たちを大切に飼育しています。

しかし、命は必ず終わりが来ます。彼らがいたことで、生生物の保全や理解を深めるのに貢献した個体も少なくありません。

亡くなった彼らへの哀悼と感謝の気持ちを込めて、開催されています。

今回は、この1年で亡くなったゾウや、ゾウ以外の動物の個体のことを紹介いたします。


写真は名古屋の東山動植物園の慰霊碑。毎年この下で慰霊祭がおこなわれています。飼育員さんや園長からの亡くなった動物たちへのお言葉や、献花がおこなわれています。

ここからは昨年9月から今年の9月の1年間で亡くなった、私が出会ったゾウとその他の動物、合わせて7個体を紹介いたします。

1 サバンナゾウ (Loxodonta africana
愛称:アコ (♀, 1963~2022) (多摩動物公園)

1965年にケニアの野生で生まれたとされる個体で、1967年にマコ (♀) と共に多摩に来園しました。
すらりとした背の高い体躯に、下方に伸びる牙が特徴的で、多くの来園者や飼育員さんに親しまれてきました。

性格は臆病で繊細な面がありましたが、信頼する飼育員さんのことにはとても大好きだったそうです。

好物は野草のクズと、トレーニング時のご褒美でもらっていた玄米おにぎりだったとか。

今年こそは彼女に会いに行こうと思っていたので、とても悲しかったです。

今年の多摩の慰霊祭では、彼女への弔文が読まれました。担当の飼育員さんから彼女への思いが綴られています。こちらからご覧いただけます。


2 アジアゾウ (Elephas maximus
愛称:シャンティ (♀, 1969~2022) (静岡市日本平動物園)

1969年4月25日にインドのマイソール州でで生まれ、1971年6月に2歳の時に来園しました。
50年以上にわたって多くの来園者に親しまれており、3歳年上のダンボ (♀) とはとても仲が良く、姉のように慕っていました。

性格は大人しく、飼育員さんが同じ空間に入って世話をすることができました!


毎日13時過ぎには公開トレーニングがおこなわれ、飼育員さんとの信頼関係がよくわかりました。
園が発行するニュースペーパーの「でっきぶらし」の8月号では、彼女への追悼特集が組まれ、飼育チーム全員の彼女への思いが綴られています。こちらからご覧いただけます。


3 アジアゾウ
愛称:浜子 (♀, 1971~2022) (浜松市動物園)


1971年に生まれたとされ、翌年4月に松男 (♂) と共に浜松に来園しました。
当時は浜松城に園があり、浜松にちなんだ名前が付けられたそうです。

1983年に現在の場所に園が移転してからは、2008年まで谷津遊園 (千葉県, 閉鎖) から来園した美代 (♀) と共に飼育され、美代には面倒見が良かったようです。

体が小柄なのが特徴で、飼育員さんのことが大好きでした。ただ、新人の方には少し厳しい一面を見せたこともあったそうです。

園の公式ブログに、飼育員さんが浜子との思い出を綴った記事が掲載されています。
よろしければ、ぜひご覧ください。

以下からは、ゾウ以外の動物たちを紹介いたします。

4 トキイロコンドル (Sarcoranphus papa
愛称:トキさん (♀) (1961~2021) (東山動植物園)

中南米に広く分布するコンドルの一種。

1962年に東山に来園し、60年近くにわたって来園者に親しまれてきました。展示場の止まり木からこちらを見おろす姿や、鮮やかな体色は気品があり、彼女がお気に入りの方も少なくなかったといいます。

私も彼女がお気に入りの個体でもありました。

飼育されているトキイロコンドルの中では、世界最高齢とされており、彼女の死で、東山でトキイロコンドルが見られなくなりました。

5 シンリンオオカミ (Canis lupus lycaon)

愛称:ティト (♂) (2010~2021) (東山動植物園)


2010年にジャック (♂) とソニア (♀) の間に生まれた三つ子のうちの1個体。
大きな体と、ウルフグレーの体色をした立派なオスでしたが、性格は穏やかでした。
翌年生まれた三つ子に対しても面倒見が良く、優しい個体でした。


後に群れ内の順位争いや、個体の搬出などで同居する個体が変わりましたが、妹のノゾミ (♀,左,今も健在) とはとても仲が良く、昨年10月に亡くなるまで、仲の良い姿をいつも見せてくれたことが印象に残っています。

6 ヒトコブラクダ (Camelus dromedarius)

愛称:ヒトミ (♀) (2000~2022) (岡崎市東公園動物園)

2000年に愛媛県のとべ動物園で生まれ、2006年~2021年までは盛岡市動物公園で暮らし、2021年の7月に岡崎にやってきました。

性格は人懐っこく、飼育員さんが来ると尻尾をふり早足で駆け寄るなど愛らしい姿を見せてくれました。お客さんをじっと眺めることもあり、人間観察も好きな面もありました。

今年2月末からは原因不明で起立不能になりましたが、飼育員さんの手厚いケアで、ゆったり過ごしていました。

好物のキャベツを食べるヒトミ。立てなくなっても食欲は健在でした。床には乾草がたっぷり敷かれ、巨体への負担を軽減していました。

しかし、今年7月末、熱中症で体調を崩し亡くなってしまいました。


7 クロサイ (Diceros bicornis)

愛称:ヘイルストーン (♂) (1991~2022) (安佐動物公園)


1991年にアメリカのサンフランシスコ動物園で生まれ、1999年に、日本のクロサイに新たな血統を入れ、遺伝的多様性を保つため、ホノルル動物園から来園しました。

名の由来はおそらく「雹 (ひょう)」。かっこいい名前が特徴的でした。
立派な体格と、角をもったオスのクロサイで、イヨとサキという2個体のメスとの間に7個体ものこどもを残し、クロサイの種の保存に大きく貢献しました。

2020年頃より足の調子を悪くするようになり、飼育員さんによる献身的なケアがおこなわれていましたが、今年7月27日に起立困難となり、餌も食べなくなり、これ以上の回復が見込めず、安楽殺をすることになってしまいました。

彼のこどもたちは国内外の動物園で活躍し、現在は孫の代も生まれ、彼の血統は続いていくと思います。


おわりに

動物園は大切な命を預かり、守る場所だと思います。生まれる命があれば、この世を去ってしまう命もあります。

この前まで元気だった個体が突然この世を去る場合もあり、その度に、今会える種や個体は、今のうちに出来る限り会いに行こうという思いが強くなります。

こうした命の大切さについても学べる貴重な場所、それが動物園。

この活動を通じても、彼らがいたことの記録をこれからも残していこうと思います。

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