世界ゾウの日記念の特集の途中ではありますが、今回は私にとって、とても大切な個体のことを、思い出の写真で振り返りたいと思います。
2年前の今日、東山動植物園でサバンナゾウ (アフリカゾウ) (Loxodonta africana) のケニーが推定46歳でこの世を去りました。
今日でこの世を去って2年。三回忌を迎えました。
私の自己紹介にもございますが、人生で初めて見たサバンナゾウで、ゾウや動物園について深く知りたいと思うきっかけをつくってくれた大切な存在でした。
40年以上も東山で暮らしてきた個体なので、世代を超えて沢山のお客様に愛されていたそうです。
よろしければご覧ください。
ケニーの紹介
ケニーは、1973年にケニアの野生で生まれた個体で、1975年11月10日、推定2歳の時に来園しました。
当時は、先輩ゾウとして、サンブー (♂, 1963~1981) とマルサ (♀, 1963~2003) が飼育されていました。
こちらが先輩ゾウのマルサ。特にマルサのことを姉のように慕っており、マルサの死後は、情緒不安定になり、1年ほどは性周期が乱れてしまったそうです。
東山に来てからは大病無く、健康に過ごしていましたが、2020年8月10日の朝に体調を崩し、昼には持ち直したものの、その日の夕方に亡くなってしまいました。
死因は急性腹膜炎だったそうです。
ケニーの個体情報は、過去の記事でより詳しく紹介しております。こちらからご覧いただけます。
思い出のアルバム
ここからは、私が撮影したケニーの写真で、在りし日の思い出を振り返りたいと思います。
こちらは、2016年の7月に撮影した写真。
この時は動物園での動物たちを記録で残すために、一眼レフカメラを購入したばかりの時に撮った思い出深い1枚です。
泥浴び場の水を鼻で吸い込んで、バシャっとしている写真ですが、
まるで、庭の水をやっているように見える写真でした!
こちらは、2016年9月撮影。
まだ残暑厳しかった頃、日陰で、大好物のソルゴー (牧草の一種) をもりもり食べています。
野生では熱帯に棲むサバンナゾウでも、暑過ぎは禁物。暑い日はこうして日陰にいることも多かったです。
こちらは、2017年5月撮影。生前、毎月第2日曜日には、彼女への餌やり体験がおこなわれていました。竹串に好物の果物を刺して、彼女に渡すスタイル。
いつもよりも彼女に接近でき、迫力満点の姿や、鼻の力の強さなどを直に感じることができました!
こちらは、2017年11月撮影。
緑豊かな東山は紅葉のシーズンを迎える頃。ケニーの運動場の低木も色づき始めていました。
西日に照らされるケニーと紅葉のツーショットは、とても美しく、個人的にもお気に入りの姿でした。
こちらは、2019年9月撮影。飼育員さんの、待て!という掛け声に応じ、鼻をあげて待てのポーズをしています。
2009年にオスのチーが亡くなってからは1個体だけになっていましたが、信頼する飼育員さんのサポートで生活を送っていた彼女。
少しでも寂しい思いをしないよう、一緒にキャッチボールをしたり、直におやつをプレゼントしたりなど、あの手この手で工夫を凝らしていました!
楽しかった遊びについては、ずっと覚えていたのだそうです。
こちらは2019年3月撮影。
ケニーは人懐っこい性格でもありました。特に、お客様の少ない平日だと、じっくりと観察していると、写真のように、こちらを気にしてようすを見てくることもありました!
ケニーのいた寝室には、こんなものが飾られていました。
これはなんと、ケニーが描いた絵なのです!
youtubeなどでも、タイなどで絵を描くゾウの動画がアップされていたりしますが、そのほとんどはゾウ使い (マフー) の指示に従っているものだそうです。
この絵はそうではなく、飼育員さんがクレヨンと紙を渡したところ、自ら紙に絵を描いたもの。ヒトの意思ではなく、彼女の意思で描いた唯一無二の作品です。
公式ブログには、この絵について心温まるエピソードが紹介されています!
こちらは、2020年8月5日に撮影。
私が最後に撮影したケニーの写真のひとつです。
コロナ禍なのもあり、電車ではなく、自分の車で運転して行ける範囲を増やしていこう!と意気込んでいたこの頃。まずは、東山を車で行けるようにしようと目論んで、この日に訪れました。
初自家用車での東山。暑い日でしたが、彼女の元気そうな姿が見られて、とても安心したことを今でも覚えています。
まさか5日後にこの世を去ってしまうなど、思いもしていませんでした…
主無き、追憶の庭
ケニーがこの世を去ってからも、彼女が暮らした獣舎はそのまま残されています。
1枚目が2022年8月、2枚目が2018年3月、ケニーが居たころの運動場の写真。
この世を去って2年が経過し、草や木はこんもり成長しています。
しかし、この場に訪れると彼女が出迎えてくれるような感じがします。
彼女が過ごした寝室も、そのままの形で残されています。
鉄柵に鼻を掛けて、こちらのようすを見てきたことが思い出されます。
現在は、寝室内では、アフリカのサバンナの動物たちの写真展がおこなわれており、
開園時間中ならいつでも見ることができます。
そこでは、園の職員が撮影した様々な動物たちの写真があり、大迫力のサバンナゾウの群れの写真もご覧いただけます!
最後に
ケニーは、その立派な姿を通して、サバンナゾウという素晴らしい動物のことを数多くの人に伝え、ゾウや動物園が好きになるきっかけや、ゾウを研究したいというきっかけなどをつくりだしてくれたと思います。
現在、国内のサバンナゾウは23個体と少なく、日本で見られなくなる可能性が高いといわれています。(1984年には84個体もいたそうです。(1))
彼女がこの世を去り、ゾウに限らず、見られるうちに会いに行き、生きた証を残そうという思いがより一層強くなりました。
将来的にサバンナゾウ舎は取り壊されるそうですが、モニュメントなどを通じて、彼女たち歴代のサバンナゾウたちが暮らした証が残ってくれたら嬉しいです。
そして訪れた方の記憶にもずっと思い出が残り続け、「こんな立派なゾウがいたんだよ」と語り継がれていって欲しいと思います。
ケニーのような素晴らしいゾウに出会えたことをとても嬉しく思っています。
かみやん
引用文献
(1) 田谷一善 (2017) ゾウの知恵 陸上最大の動物の魅力にせまる SPP出版
先日は返信頂きありがとうございました。私も嬉しかったです。実はSNSが不慣れな為思案しましたが、お話がとても丁寧でそれぞれの違いが分かり易く、お写真にも愛情が感じられたので気持ちをお伝えしたくなりました。私もケニーさん大好きでした。2019年3月のお写真は私の録画にも残っています。誰もいない時のケニーさんと私の交信のようなひと時がとても嬉しかったことを今でも忘れられません。
返信削除こちらこそ、コメントしてくださり、本当にありがとうございます。そう言ってくださり、とても嬉しいです。ケニーは私だけでなく、代表にとっても印象深い個体で、多くの方に愛されてきたので、命日を期にご紹介いたしました。いつも私たちの活動を見てくださり、感謝しております!
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