甲府市遊亀公園附属動物園 その1 アジアゾウのテル

前回、遊亀のここがいいぞ!というポイントをご紹介しましたが、今回から数回、個々の動物たちにフォーカスした詳細編をお届けいたします。

今回は、園一番の人気者にして長年親しまれているアジアゾウ(Elephas maximus)のテルについて。

甲府に来園して約40年、多くの方に親しまれてきた彼女。そんな彼女についてご紹介いたします。

前回のクイズの答えも、記事内で発表いたします。


はじめに テルについて


テルは、1978年に生まれたとされるメスのアジアゾウで、1980年にラオスの動物園からメスのミミ (1979~2000)と共に来園しました。(1)

彼女が来園することになったのは、先代の個体が亡き後、甲府市在住の市橋源之助さんが後継のゾウの購入のために多額の寄付をしたことがきっかけとなったそう。(1)

「テル」の名の由来は、市橋さんの母親のてるよさんの名前からとったものだそうです。(1)


彼女は、耳や鼻が白い部分が多いことが特徴です。

アジアゾウは年齢を重ねるとともに、鼻や体の一部分が白や肌色を帯びてくるといわれているそうです。(2)


また、彼女は人懐っこい性格です。お客さんにも鼻を伸ばして挨拶してくれることも!

私が訪問した時は平日で空いていたためか、何度か鼻を伸ばして挨拶してくれました。

この日は見られませんでしたが、信頼している飼育員さんと一緒に遊んだりする姿も見られるようです。

(1) 市立動物園のゾウ「てる」https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/kamejii/024.html 2022年6月27日訪問

(2) Don E. Wilson, Russell A. Mittermeier (2011) Handbook of the mammals of the world : Hoofed mammals Lynx Edicions


テルの暮らし

ここからは、テルの暮らしと、動物園が彼女が快適に過ごせるようにおこなっている取り組みをご紹介します。

まずは、テルが暮らすゾウ舎はこんな感じです。


中央の鉄棒を挟んで左側に日除け用の東屋や砂場、遊び道具の丸太があります。

元々は鉄棒を挟んで右側のみで、左側には1994年までカバ (Hippopotamus amphibius)の獣舎があったそうです。


右側の部分には小さなプールがあり、上からは常に新鮮な水が出てくるようになっています。


テルは元々ダンスのように体を動かす「常同行動」と呼ばれる行動が目立っていたそうです。


これはゾウ舎前に掲示されていたサイン。
この行動を減らして、彼女が快適に過ごせるよう、飼育員さんたちは様々な工夫を凝らしています。

まずは、餌の与え方の工夫。


まずは、①の横にあるかご。東屋の上からかごを吊り下げてあります。


このかごに餌を入れ、鼻を伸ばさないと食べられないようになっています。
この時はおこなっていませんでしたが、少しずつ取り出して食べることで、暇な時間を減らし、鼻や首の筋肉を鍛えることにつながるそうです。

先日のクイズの答えは、4のアジアゾウでした!コメントしてくださった皆さま、ありがとうございます!


お次は、②の吊り下げられた丸太。これには小さな穴が空いています。


そこにペレットや落花生などを入れ、鼻先でつまんで取り出せるようにしているそうです。


私が訪れた時は、太いタケの幹をおやつとして与えていました。


太いタケは割る必要があるのと、硬さがあるのでしっかり噛み砕く必要があります。
そうすることでも満足感を与え、食事の時間を伸ばすことにつながるそうです。


また、元々運動場には砂場がなく、彼女のために飼育員さんが砂を運んでいたそうですが、
いつでも砂浴びができるように、数年前に砂場が新設されました!


ここはテルのお気に入りスポットでもあり、水浴びした後はここで砂浴びをすることが日課になりました。


さらに、盆地に立地するゆえに夏場は暑くなる甲府。
いつでも涼めるよう、新たに大きな日除け(写真の赤丸)も新設されたようです。

彼女のお気に入りスポットである、砂場の近くに設けられているので、砂浴びをした後は、その下で休んでいることも。


訪問時は、気温が高かったためか、日陰の場所でおやつをあげていました。


暑さにも配慮しながら、彼女が快適に過ごせるように工夫されていました。

こうした取り組みは、毎日同じものだけをずっと続けていたりすると、慣れが生じて効果が減ってしまうこともあるそうです。(3)

そこで、さまざまなエンリッチメントを日替わりでおこない、
彼女を飽きさせないような工夫をしているそうです。

テルにおこなっているエンリッチメントの数々は、甲府市遊亀公園附属動物園の公式Twitterにて頻繁に更新されています。興味を持たれた方はぜひご覧ください。


また、こうした取り組みは、ただおこなうだけでなく、動物の行動を観察し、本当に環境を豊かにできたかを効果測定する必要があります。(4)

その行動観察を、大学(帝京科学大学)と共同で実施しており、定期的な行動観察がおこなわれているそうです。

実際に、行動調査をした結果、こうした取り組みが、
常同行動の減少に効果があったことがわかったそうです。(5)

テルはひとりですが、飼育員さんによる手厚いケアのおかげで、甲府の地で快適に過ごしています。

リニューアルによって、彼女が快適に過ごせるよう、運動場が拡張され、プールや砂の面積を大幅に広げたり、採食時間を伸ばすためのさまざまな仕掛けが新設される予定とのこと。

詳しくはこちらをご覧ください。

私も、こうしてテルが快適に暮らしているのを見られてとても安心しました。
これからも甲府の地で、のびのびと過ごしていって欲しいと思っております。

(引用文献など)
(3) 村田浩一, 楠田哲士監訳 (2011) 動物園学 285-286 文永堂出版
(4) 村田浩一, 楠田哲士監訳 (2011) 動物園学 283-284 文永堂出版
(5) 中村俊太, 近藤岳, 並木美砂子 (2021) 単独飼育アジアゾウの行動調査報告 甲府市遊亀公園附属動物園におけるエンリッチメントの試み 79-85 帝京科学大学教育・教職研究第6巻第2号


おまけ 園内には他にもゾウがいるぞ!

遊亀の園内各所には、ゾウをモチーフにしたベンチなどさまざまなものがあります。


園内にある石のベンチを支えているのは、ゾウの石像。


ゾウ舎前にはゾウのイラストの顔はめパネルも。記念に撮るのもアリでしょう!


園内のミニ遊園地にも、ゾウのオブジェが。どこか時代を感じさせる雰囲気を感じます。

他にも様々な所にゾウが隠れています。気になった方は是非訪問してチェックしてみましょう!

クイズ

以下の写真に写っている、この足跡は誰の足跡でしょうか?


1.アジアゾウ

2.アメリカバク

3.シロサイ

4.チリーフラミンゴ

クイズの答えは、次回のブログにて発表させていただきます。これが答えかな?と思われた方はコメント欄にコメントしてくださると嬉しいです。

コメント

  1. 4番のチリーフラミンゴだと思います!

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    1. ありがとうございます。答えは数日後に発表させていただきますので、楽しみにしていただければと思います!

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  2. ②アメリカバク

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    1. ご覧になってくださり、ありがとうございます。数日後のブログ内にて答えを発表させていただきます!

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  3. バクでしょうか?

    とても懐っこく可愛い顔のテル
    今まで会った象の中で常同行動(ダンス)が多く感じました
    飼育員さん達の工夫で軽減されているとのこと、感謝します

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    1. バク❗️

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    2. コメントありがとうございます!正解です!

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