マルミミゾウのダイ、安佐動物公園に無事到着!

2022年6月2日に、秋吉台自然動物公園(秋吉台サファリランド)で飼育されていたマルミミゾウ (Loxodonta cyclotis)のダイ (♂, 1999~)が広島市安佐動物公園に無事移動が完了したとニュースがありました。

移動の理由は、安佐動物公園で暮らすメイ (♀,1999~)との繁殖を目指すため。

詳しい情報は、こちらをクリックしてご覧ください。

今回はそんな彼のこと、秋吉台で暮らしていたころのようすをご紹介いたします。


はじめに マルミミゾウについて

マルミミゾウは、アフリカの西部~中央部にかけての森林や湿原などに生息するゾウの1種。

一見すると似ている2種ですが、違いがあります。


左がマルミミゾウ、右がサバンナゾウです。広島市安佐動物公園にて撮影。
左がメイ (♀,1999~)、右がアイ (1982~2021)という個体です。

マルミミはサバンナゾウよりも体格が一回り小さいです。

体重は約2.7~5トン程、体高は約2.2m~2.8m程。(1)

対するサバンナゾウは体重は約3.0~8トンほど、体高は2.5~3.5m程です。(2)


体の大きさ以外にも、違いがあるとされています。


左がマルミミゾウのダイ、右が広島市安佐動物公園にて飼育中のサバンナゾウのタカです。


牙(赤丸)は、サバンナゾウが上方に伸びることが多いことに対し、マルミミゾウは下方に伸びることが多いとされています。

耳(黄丸)は、マルミミゾウの方が丸みを帯びていることが特徴です。


生息地の環境破壊やヒトとの軋轢、象牙目当ての狩猟により、現在絶滅が大変心配されており、絶滅が最も危惧される絶滅危惧IA類(CR)に指定されています。(3)


日本にはマルミミゾウは彼と、広島の安佐動物公園のメイ(1999~, ♀)の2個体しか飼育されておらず、世界の動物園でも彼ら含めて数個体しかいないといわれているそうです。

そんな彼らの繁殖を目指すべく、移動が決定したといいます。

引用文献

(1) Don E. Wilson, Russell A. Mittemeier (2011) Handbook of the mammals of the world: Hoofed mammals 77-78 Lynx Edicions

(2) Don E. Wilson, Russell A. Mittemeier (2011) Handbook of the mammals of the world: Hoofed mammals 77 Lynx Edicions

(3) African Forest Elephant : IUCN Red List  https://www.iucnredlist.org/species/181007989/204404464

2022年6月6日訪問

秋吉台時代のダイについて

お次はダイのこと、そして彼が秋吉台で過ごしていた時に見せてくれたさまざまなシーンを紹介いたします。

ダイは、1999年にアフリカ西部の国、ブルキナファソで生まれたとされるオス個体で、2001年に現地の保護施設からミミ (♀, 1999~2013)と共に秋吉台にやってきました。

当初はサバンナゾウと思われていたそうですが、外見や体格の違いや、遺伝子鑑定でマルミミゾウであることがわかったそうです。

順調に成長し、ミミとは大変仲が良く、繁殖が期待されていたそうですが、2013年にミミが亡くなってからは単独で生活していました。(ミミの骨格は、東京の国立科学博物館に収蔵されているようです。)


彼の暮らしていた運動場はこんな感じ。


写真左に仕切りがありますが、どちらにも行けるようになっており、左側はサファリゾーンの車道から見ることができ、手前に見える右側は歩いて回ることのできるエリアから見られました。

右側のエリアはとても近くで見られ、時間限定でおやつをあげることもできました。


おやつをあげるため、飼育員さんが彼の名を呼ぶと、早足で駆け寄ってきて、鼻をあげる待てのポーズを見せてくれました。
この飼育員さんとは来園した時からの仲。強固な信頼関係が築かれていました。



こちらはサファリゾーンの車道から撮影したダイ。撮影時はマスト期といって、成熟したオスゾウが年に数回訪れる時期。この時期は側頭部から液体が垂れ落ちたり、気性がとても荒くなるといわれています。

危険な時期ではありますが、立派に成熟したオスとしての証拠。幼い頃は小さくてやんちゃだった彼が、立派なオトナに成長してくれて嬉しいと飼育員さんがおっしゃっていました。



これは、ダイが安佐動物公園に移動するために入っていた輸送箱。ゾウのパワーに耐えうるよう、鋼鉄製の箱です。

安全に彼を運ぶためには、箱の中で落ち着いてもらい、安全な場所だとわかってもらう必要があります。

2019年頃より飼育員さんと二人三脚で、箱に慣れてもらうためのトレーニングがおこなわれていました。

訪問時もトレーニングは順調で、飼育員さんは、彼は箱に入って落ち着いて餌を食べているとおっしゃっていました。


閉園前、おやつは売り切れてしまいましたが、飼育員さんに構ってほしくなり、奥から駆け寄ってきたダイ。
立派に成熟しても、育ての親の飼育員さんには絶大な信頼を寄せていることがわかりました。


2歳の時に来日し、飼育員さんの愛情たっぷりに育ったダイ。広島の環境にも少しずつ慣れ、お相手のメイとも仲良くなり、良い結果に結びつくことを願っています。

大型動物の輸送はとても大変だと聞きます。まずは無事到着してほっとしました。

ダイが一般公開され、環境に慣れたら、安佐動物公園を訪問したいと思っております。

神山


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