琵琶湖博物館 その2 龍の骨から見えるモノ

神山です。

前回は先月1月12日に訪れた琵琶博の、化石ゾウについてご紹介いたしましたが、今回は、個人的に面白いなと思った展示と、それに連なる話題をご紹介いたします!


絵巻物に描かれた、龍の骨の正体

まずは、こちらをご覧ください!


こちらは、琵琶博で展示されている、江戸時代の1804年に描かれた、「龍骨図」という絵巻物。何やら龍のような頭蓋骨や、大腿骨のような骨など様々な絵が精巧に描かれています。

当時の人々は、大自然の脅威を龍と表現し、彼は琵琶湖の奥深くに棲むと信じられてきました。かの存在がひとたび現れると、轟雷が降り注ぎ風雨が巻き起こり、地を揺るがすとあります。



これらは人々にとって脅威であると同時に、恩恵もありました。

そうした存在を後世に残したものに違いありません。


実は、骨の正体は、トウヨウゾウ(Stegodon orientalis)の化石だったことがわかりました!


生きているゾウ自体、当時の人々にとっては、見たことも聞いたこともなかったモノだったことだと思います。


※1728年に、8代将軍徳川吉宗がベトナムからアジアゾウ2個体を導入し、長崎の出島から、将軍が待つ江戸までのコースを巡礼し、浜離宮で飼育された歴史がありますが、1800年代初期にゾウは来ていないため、ほとんどの方は実物を見たことがない可能性が高いと思います。


ましてや、この化石がゾウのものとは全く思いもしなかったことが想像できます。

そのため、巨大なこの化石をゾウのものとは思わずに、人智を超えた強大な存在の骨だろうと思ったのかもしれません。

そして、強大な存在=龍だったため、骨を接ぎ合わせて龍の骨の絵として後世に記録として残したのかもしれませんね。


また、ギリシャ神話に出てくる一つ目の巨人「キュクロプス(サイクロプス)」の基となったものの一つに、ゾウの頭蓋骨であるといわれています。ゾウの頭蓋骨を真正面から見ると、中央にあるのが鼻腔。

それを巨大な眼窩(目玉のある位置)と信じ、一つ目の巨大な怪物だと信じた説があります!


これは、サバンナゾウ(Loxodonta africana)の頭蓋骨。真正面から見える中央の窪みが、鼻腔にあたります。本当の眼窩の場所は、側面にあります!(国立科学博物館にて撮影)


シベリアでは、永久凍土から発掘された、ケナガマンモス(Mammothus primigenius)の遺体や骨などが、ゾウの仲間ではなく、巨大なネズミやモグラの仲間と信じられていた時代もあるといいます。


様々な文化圏で、ゾウの骨を、何か別の強大な存在と信じ、そこから伝承が生まれていくのもなかなか面白いなと思います!ゾウの骨には、私たちを引き付ける力があるのかもしれませんね。


神山


コメント